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「自律神経が乱れていますね。薬を出しておきましょう」と言われたものの、「この薬は何のために飲んでいるの?」と疑問に思ったことはありませんか。
自律神経の不調で使われる薬を調べてみると、実は「自律神経を整える薬」が一種類あるわけではありません。不安、動悸、低血圧、立ちくらみなど、どの症状や病態を治療するのかによって使われる薬が変わります。




まずは、どんな薬が使われることがあるのかを一覧で見てみましょう。そのあとに薬の名前の見方、何を目的に使う薬なのか、研究ではどこまで効果が確認されているのかを順番に見ていきます。
一覧を見る前に薬の名前を整理しておきましょう。薬には、成分そのものを表す「一般名」と、販売されるときにつけられた「商品名」があります。例えば「トフィソパム」が一般名で、「グランダキシン」が代表的な商品名です。この記事では「一般名(代表的な商品名)」の順番で表記します。
なお、後ほど出てくるSSRIやSNRIは商品名ではなく「薬の種類を表す分類名」です。また、「漢方薬」も一つの薬の商品名ではなく、加味逍遙散や半夏厚朴湯など、さまざまな処方をまとめた呼び方です。
「どの薬が一番効くのか」を比べる前に、「自分は何の症状を治療するためにその薬を飲んでいるのか」を知ることが大切です。
10種類の薬を一つずつ暗記する必要はありません。何を目的に使う薬なのかで整理すると、全体像がかなり分かりやすくなります。
自律神経症状そのものに使われる薬として①グランダキシン、不安や緊張に使われる薬として②セディールと③デパスがあります。
不安やパニックなどに使われる抗うつ薬として④セルトラリン、⑤パロキセチン、⑥デュロキセチン、低血圧や立ちくらみに使われる薬として⑦ミドドリンと⑧アメジニウムがあります。
さらに、心拍数が上がり過ぎる病態に使われることがある薬として⑨プロプラノロール、症状や体質などを考慮して選ばれる⑩漢方薬があります。
つまり「自律神経失調症だからこの薬」ではなく、不調の背景に何があるのかによって選ばれる薬が変わるということです。


①トフィソパム(グランダキシン)は、日本では自律神経失調症に伴う動悸、発汗、頭痛・頭重、倦怠感などの自律神経症状に対して使われる薬です。
「トフィソパム」が薬の成分を表す一般名で、「グランダキシン」が代表的な商品名です。今回紹介する薬の中では、「自律神経失調症」という言葉と比較的直接つながる薬といえます。
ただし、正式に自律神経失調症へ使われている薬であることと、大規模な研究で効果が完全に決着していることは同じではありません。
不安症状などを対象にした研究では改善が報告されていますが、後ほど紹介する一部の抗うつ薬と比べると、大人数を対象にした研究はまだ多くありません。
そのため、「グランダキシン=どんな自律神経症状にも効く薬」と考えるのではなく、何の症状を改善する目的で処方されているのかを確認することが大切です。


②タンドスピロン(セディール)は、不安や緊張を軽くするために使われる抗不安薬です。「タンドスピロン」が一般名、「セディール」が代表的な商品名です。
不安が強くなると、動悸、胃腸の不調、息苦しさ、発汗など、身体の症状まで強く感じることがあります。セディールについては、不安症を対象に薬と比較対象を公平に比べたランダム化比較試験もあり、不安症状の改善が報告されています。
③エチゾラム(デパス)も、不安や緊張、不眠などに使われる薬です。「エチゾラム」が一般名、「デパス」がよく知られた商品名です。
デパスは比較的名前を聞く機会の多い薬ですが、長期間の使用には注意が必要です。長く使い続けることで薬への依存が生じることがあり、急に減量・中止すると、不安、不眠、ふるえなどの症状が現れる場合があります。
「自律神経を整えるために、とりあえず長く飲み続ければよい」という薬ではありません。効果や使用期間について疑問がある場合は、処方した医師へ相談してください。


④セルトラリン(ジェイゾロフト)、⑤パロキセチン(パキシル)、⑥デュロキセチン(サインバルタ)は、「抗うつ薬」と呼ばれる種類の薬です。ただし、名前に「抗うつ」と付いていても、うつ病だけに使われる薬ではありません。
④セルトラリンと⑤パロキセチンは、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)というグループです。SSRIは商品名ではなく、薬の種類を表す名前です。脳内で情報を伝えるセロトニンという物質の働きに関係し、薬によってはパニック症などにも使われます。
⑥デュロキセチンは、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)という別のグループです。こちらもSNRIという商品があるわけではなく、薬の分類名です。セロトニンに加えてノルアドレナリンという物質の働きにも関係し、うつ病・うつ状態や一部の慢性疼痛などに使われます。
これらの薬については、不安症やパニック症などを対象にした比較的大きな研究もあります。「自律神経を直接整える薬」というより、不安やパニックなど背景にある病態を治療する薬と考えたほうが分かりやすいでしょう。
例えば、不安やパニックに伴って動悸、発汗、息苦しさ、胃腸症状などが出ている場合には、その背景にある病態を治療することで身体症状も軽くなる可能性があります。
「自律神経の薬をもらった」とだけ考えるのではなく、何の診断や症状に対して処方されている薬なのかを知っておくことが大切です。


自律神経の不調というとストレスや不安を想像しがちですが、立ったときに血圧が下がることが症状に関係している人もいます。この場合には、不安を抑える薬とはまったく違う薬が使われます。
⑦ミドドリン(メトリジン)は、「ミドドリン」が一般名、「メトリジン」が代表的な商品名です。血圧を保つ方向に働く薬で、起立性低血圧などに使われます。
複数の研究をまとめて調べた報告では、血圧や症状の改善を示す結果があります。ただし、研究によって結果にばらつきがあり、「誰にでもはっきり効く」とまで言えるデータではありません。
⑧アメジニウム(リズミック)も低血圧に使われる薬です。「アメジニウム」が一般名、「リズミック」が代表的な商品名です。効果を調べた臨床研究はありますが、古く小規模な研究が中心です。
同じ「めまい」「だるさ」でも、不安が関係しているのか、血圧が下がっているのかでは選ばれる薬が変わります。
立ちくらみや失神を繰り返す場合は、「自律神経のせいだろう」と自己判断せず、血圧や心臓などほかの原因も含めて確認することが大切です。
血圧に作用する薬も、自己判断で量を増やしたり減らしたりせず、処方した医師の指示に従ってください。


⑨プロプラノロール(インデラル)は、「プロプラノロール」が一般名、「インデラル」が代表的な商品名です。心拍数を抑えるβ遮断薬(ベータ遮断薬)という種類に分類されます。
例えば、立ち上がると心拍数が大きく増えるPOTS(体位性頻脈症候群)という病態があります。このような患者さんを対象とした研究では、低用量のプロプラノロールによって心拍数や症状が改善したという結果があります。
ただし、これは「自律神経失調症ならインデラルを飲めばよい」という意味ではありません。POTSという特定の病態を対象にした研究です。
また、プロプラノロールを「不安そのものを治療する薬」として調べた研究では、効果が明確とは言えません。
動悸という症状だけを見て薬を選ぶのではなく、「なぜ心拍数が上がっているのか」を確認することが重要です。
動悸が続く場合には、不整脈や甲状腺の病気など、別の原因がないかを確認する必要がある場合もあります。
「自律神経の症状に見える」ということと、「原因が自律神経だけである」ということは同じではありません。


⑩漢方薬は一つの商品名や一つの成分名ではありません。加味逍遙散や半夏厚朴湯など、さまざまな漢方処方をまとめた呼び方です。
それぞれの処方で含まれる生薬も、想定されている症状も異なります。そのため、同じ「漢方薬」という言葉でまとめても、薬の中身は同じではありません。
したがって、「漢方は自律神経に効くのか?」と一括りにして評価することはできません。処方ごと、対象となる症状ごとに研究を確認する必要があります。
「自然由来だから必ず安全」「昔から使われているから必ず効く」と考えないことも大切です。
ここまで見てくると、自律神経失調症に一番効く薬を単純なランキングで決めることは難しいことが分かります。
不安や緊張が中心なのか、パニック症などが背景にあるのか、立ったときに血圧が下がるのか、心拍数が大きく上がるのかによって、治療の考え方が違います。
「自律神経の薬をください」と考えるより、「自分のこの症状は何によって起きているのか」を確認することのほうが重要です。
また、研究で効果が示されているからといって、すべての人に同じように効くわけではありません。反対に、大規模な研究が少ない薬だからといって、その人にとって意味がないとも限りません。
研究結果は治療を考えるための大切な判断材料ですが、年齢、体質、持病、症状の出方などによって実際の反応には個人差があります。
薬によって眠れるようになった、外出できるようになった、仕事を続けられるようになったという変化も、その人にとって大切な治療効果です。
一つの薬で変化を感じなかったからといって、「自律神経の不調はもう治らない」と考える必要もありません。
薬を飲み始めても変化を感じない、副作用が気になる、いつまで飲むのか分からないということもあります。
その場合でも、自己判断で急に減量したり中止したりしないことが大切です。薬によっては、急に中止することで身体に不調が出ることがあります。
「何のための薬なのか」「いつまで続ける予定なのか」「効果を感じない」と疑問に思った場合は、処方した医師や薬剤師へ確認してください。
薬を飲むか飲まないかの二択ではなく、自分の症状に合った治療を探していくことが大切です。
ロータス整骨院では、薬を飲んでいる方に「薬をやめて整体だけにしてください」とお伝えすることはありません。
まず、病院でどのような診断を受け、何の症状に対してどの薬が処方されているのかを確認します。


そのうえで、頭部、首、肩、背中、骨盤、内臓など身体全体を確認し、姿勢、左右差、筋肉の緊張、呼吸、身体の使い方などを見ていきます。
医療機関で病気や症状に対する治療を受けることと、睡眠や仕事、身体の緊張、普段の身体の使い方を見直すことは両立できます。
ただし、身体の歪みを「自律神経失調症の原因」と決めつけたり、整体を受ければ薬が必要なくなると約束したりすることはありません。
しかし、今まで当院で施術を受けてきた人には薬が減っていったり、薬の服用が無くなった方が大勢いらっしゃいます。断薬、減薬をお望みの方は、身体を整え、メンタルもリカバリーできた方が数多くいる当院をお試し下さい。
自律神経の薬を調べて分かるのは、「一番効く薬」を探すことより、自分の症状が何によって起きているのかを確認することが重要だということです。薬を飲んでも不調が続き、身体側の負担も気になっている方は、下記の記事も併せてお読みください。



